既存の漆喰外壁に塗装する方法と、モルタル外壁に漆喰を塗るポイントを解説!
「漆喰の外壁の塗装はどうすればいいのだろう?」
「漆喰壁に新しく塗装は可能だろうか?」
日本家屋を中心に、手塗りの風合いや塗り方のバリエーションが豊富なことで人気の漆喰(しっくい)。
リフォームやDIY等で壁に色を塗りたいときに、漆喰の外壁には塗装ができるのでしょうか?
結論から言うと、漆喰の外壁には塗装が可能です。
しかし、漆喰の外壁に塗装するには専用塗料を使わなければなりません。
安易に漆喰に塗料を塗ってしまうと漆喰壁の性能を失います。
また、1~2年ほどで塗装のひび割れや剥がれを起こしてしまうでしょう。
この記事では、「既存の漆喰外壁に塗装する方法」と「モルタル外壁に漆喰を塗装するポイント」
について紹介いたします。
※モルタル外壁の塗装について詳しく知りたい方は「モルタルの外壁塗装にかかる費用や注意点!後悔したくないなら要チェック」もあわせてご覧ください。
塗装業者の選び方を知りたい方は「塗装業者の7つの選び方」をご覧ください。
既存の漆喰に塗装をするケースで必要な条件
漆喰は「呼吸する壁」とも言われます。
漆喰の壁表面は無数の微細な穴が開いており、この微細な孔に空気が通ることで
調湿を行えるからです。
漆喰壁に塗料を塗ると微細な穴がふさがれてしまい、逃げ場を失ってしまった
湿気は強い圧力で穴を塞いだ塗料を押し出そうとします。
漆喰に適さない塗装をした場合には、塗料が膨らんだように浮いたり、
1年から2年でボロボロに剥がれ落ちたりします。
漆喰の上に塗装をするには、次のような塗料が適しています。
つや消し塗料
漆喰の表面は光沢のない落ち着いた仕上がりがほとんどです。
建物の雰囲気にも合わせる必要があるので、漆喰の外壁塗装には「つや消し」の塗料が使用されます。
アルカリ耐性が強い塗料
漆喰の原料は、石灰石を焼いて水を加えた消石灰(水酸化カルシウム)が主原料となっています。
消石灰は強いアルカリ性を持っており、塗料は一般的にアルカリ性に弱い性質を持っています。
したがって、漆喰に塗料を塗るにはアルカリ耐性が強い塗料でなければなりません。
調湿性がある塗料
漆喰は呼吸しており、塗料を塗ってしまうと特性である「調湿性」が妨げられてしまいます。
塗装をすると、漆喰の微細な穴を通ってきた湿気が塗料の裏面にこもってしまい、
塗装のひび割れや剥がれが起きてしまいます。
そのため、使用する塗料は湿気をとおせる調湿性能を持った塗料でなければなりません。
モルタル外壁に漆喰を塗装するメリットとデメリット
次に、モルタル外壁に漆喰を塗った場合のメリットとデメリットについて解説します。
漆喰のメリット
昔から日本家屋で使われてきた漆喰は、調湿性の他にも
防水性や防火性にも優れた建材として利用されてきました。
最近では、ホルムアルデヒドの分解・吸収効果や抗菌効果も確認されており、
昔ながらの漆喰はシックハウス症候群にも有効というメリットがあります。
耐用年数が100年以上ある
漆喰はメンテナンスを行えば耐用年数が100年以上も持つ壁材です。
主成分となっている水酸化カルシウムは、空気中の二酸化炭素を吸収しながら硬化していくので、
時間が経っても強度が落ちることはありません。
白く美しい外観
ユネスコ世界遺産である「姫路城」の白い外観にも漆喰が使われています。
漆喰で作る白く美しい外観は、和風デザインのみならず洋風のデザインにもマッチします。
漆喰のデメリット
たくさんのメリットを持つ漆喰にも、大きなデメリットが存在します。
費用が高い
一般的な外壁に比べると、漆喰の施工費用が高いことがデメリットとして挙げられます。
一般住宅で最も使われている「窯業用サイディング」の施工費用は、
1平方メートルあたり3,500〜5,000円が相場ですが、
漆喰の施工費用の相場は6,000円〜1万円程度です。
漆喰を施工するには、漆喰壁の施工ができる左官職人の確保や、
漆喰の乾燥を待って複数回塗り直しを行う工程が必要になるので、
工期が長くなるゆえに費用が高くなります。
施工の難易度が高い
漆喰の壁は、漆喰の原料と水を混ぜ、つなぎの「ノリ」や「スサ」という繊維質の物を入れて作ります。
漆喰は、その時の季節や状況に応じて水やつなぎを調整して作ります。
また、壁に塗るときには「コテ」や「ヘラ」を使って仕上げますが、
均等に平たく塗るには左官職人でも難しいものです。
漆喰外壁の劣化症状とメンテナンス方法
漆喰外壁に付いた汚れやダメージごとのメンテナンス方法をご紹介します。
「塗装や補修するほどではないけど、外壁のちょっとした汚れが気になる」という人は多いはずです。
施工難易度が高い漆喰の外壁でも、汚れやダメージによっては自分でメンテナンスも可能です。
大掛かりな塗装や補修をする前に、まずは普段のメンテナンスを見直すと、費用を抑えながら美観や機能性を守ることができます。
軽い汚れ
常に雨風にさらされる外壁には、何かしら汚れが付くものです。
しかし、漆喰は白いので、ちょっとした汚れでも目立ち美観を損ねる原因になります。
漆喰の外壁に付いたちょっとした汚れは、まずは消しゴムを使ってやさしく擦ってみましょう。濡れ雑巾でさっと拭き取るのも方法のひとつです。
より頑固な汚れには、水で濡らしたメラミンスポンジを使って擦ってみてください。
メラミンスポンジは、汚れだけではなく擦った箇所全体を白くします。
よって、古くなって全体の色が変化している漆喰外壁に使う場合は、擦った箇所だけ白くなってしまう場合も考えられるので注意しましょう。
使用前に、同じ漆喰の外壁の目立たない部分を擦ってみて、どれくらい変化が現れるか確認のうえ使ってください。
カビやコケ
漆喰は、アルカリ性でカビが生えにくいとされる外壁材です。
しかし、温度や湿度などカビの生育条件が整っていたり、樹液やほこりなどを養分にしたりするとカビが生える場合があります。
まずは、漆喰にできた黒ずみがカビなのかコケなのかを見極めましょう。
スポンジや雑巾などで拭き取ってみて、すぐに取れるようならコケ、取り除けないようならカビです。
カビは外壁内部に菌糸が生えている状態なので、拭き取るだけでは取り除けません。
この場合は、塩素系漂白剤やカビ除去剤を使って処置します。
漂白剤の場合は、水で薄めて使用してください。
霧吹きで吹き付けて布で拭き取るのもいいですし、ペースト状にした重曹を汚れ部分に塗布して放置、しばらくして拭き取ったら、その部分に水で薄めた漂白剤を吹き付けてまた拭き取るとより効果的です。
カビ除去剤は、使用する商品の使い方に従ってください。
どちらのアイテムを使う場合でも、酸性ではなく、塩素系のものを用いるようにしましょう。
色汚れ
外壁にはなかなかないかもしれませんが、飲み物や食べ物、フェルトペンなどの色素が漆喰に染み込んだ場合は、サンドペーパーでその部分を擦り取るのも方法のひとつです。
できる限り目が細かいサンドペーパーを選びましょう。
目の荒さが数字で分かれているので、目が細かなサンドペーパーを選びたいときは、数字の大きなものを選択してください。
コツは、丁寧にやさしく擦ることです。
強く擦ると漆喰が傷付いたり、その部分だけくぼみになったりする恐れがあります。
色ムラ
色が付いた漆喰を外壁に使うと、色にムラが出る場合があります。
色ムラの原因の多くは、エフロレッセンス(白華)と呼ばれる表面が白くなるチョーキングの症状です。
冬に施工した漆喰に起こることが多く、硬化不良が理由で起こります。
まずは固く絞った雑巾で白くなっている箇所を拭いてみましょう。
それでも白い粉が出ててくる場合は、塗り替えが必要です。
他には、「チョーキングストップ」という漆喰専用のチョーキング止めを問題箇所に塗る方法があります。
浮き
温度や湿度の影響で、漆喰が下地から浮いてしまうことがあります。
漆喰が浮いた場合は、浮いたり、剥がれたりした箇所の規模によって補修方法が変わります。
放っておくと雨漏りや下地の腐食が進み劣化がひどくなるので、早急に補修するようにしましょう。
クラック(ひび割れ)
漆喰は、自動車が通ったときの振動や地震の揺れ、下地のセメントが硬化不良を起こしたり、厚く塗りすぎたりしてしまう場合にもひび割れることがあります。
症状によっては塗り替えだけでは改善できないことがあり、その場合は下地の切り替えが必要です。
ひび割れが漆喰内部や下地まで到達していない場合は、塗り替えでの対応も可能です。
放っておくと雨漏りだけではなく、住宅の耐震性にまで影響を及ぼします。
素人が目視で確認するだけではどれくらいまでひびが到達しているか正確にはわからないため、必ず業者や職人に確認してもらいましょう。
漆喰を外壁塗装や補修する場合の費用と工期の目安
以下では、既存の漆喰外壁に塗料を塗装する場合や漆喰のひびや割れの補修、さらにモルタルの外壁に、
漆喰を塗装する場合に掛かる費用や工期について説明いたします。
既存の漆喰に塗装をする場合
漆喰の外壁に塗装する場合には、漆喰壁専用の塗料を使って塗装しなければなりません。
また、塗料と漆喰の吸着性を高めるため「シーラー」を漆喰下地処理として塗らなければなりません。
既存の漆喰外壁の上に漆喰を塗装する大まかな流れは、
下地処理、シーラーで下塗り、中塗り、上塗りの順番です。
まずは、浮きやひびなどがないかチェックし、既存の漆喰の状態を確認します。
状態が悪く、強度が低くなっている場合は撤去が必要です。もし強度に問題がなさそうでも、カビや汚れなどがある場合には、高圧洗浄やケレンなどを行い、一度きれいにしてからシーラーを塗るようにしましょう。
塗装を行う場合、平均相場は1平方メートルあたり3,000〜3,500円が相場になり、
工期も数日程で完了します。
既存の漆喰を補修する場合
漆喰外壁の補修には、漆喰の劣化の状態によって補修方法が変わってきます。
漆喰外壁の表面にひびが入っている場合は表面に漆喰の重ね塗りを行い補修します。
既存の漆喰外壁を補修するときの大まかな流れは、
まず剥がれている部分を処理し、漆喰を塗らない部分をマスキングテープで養生します。
その部分に下塗りをし、乾いてから上塗りをして完成です。
ひび割れが酷くて下地も見えている場合は、
漆喰をすべて取りのぞいて下地からやり直ししなければなりません。
補修部分の規模や症状の程度によって補修方法は変わります。
気になる場合は、一度業者や職人に確認してもらいましょう。
ひび割れに漆喰を重ね塗りする場合には、1平方メートルあたり5,000円以上が相場となります。
下地からやり直しする場合には1平方メートルあたり8,500円~3万円と費用が高くなります。
工期も修復の度合いによって、3日〜3週間かかるでしょう。
モルタル外壁に漆喰を塗装する場合
既存のモルタル壁に漆喰を塗装する場合には、
まずモルタルと漆喰の吸着力を高める為にシーラーを塗り、
その上から漆喰を重ね塗りしていきます。
モルタル外壁に漆喰を塗装するときの大まかな流れは、
養生をする、モルタル壁の下地処理(目荒らし)、シーラーを下塗り、中塗り、上塗りの順番です。
意外に大事なのが、モルタル壁の下地処理です。しっかりと行うことで、漆喰の保ちが変わります。
また、中塗りがしっかりと乾いたことを確認してから、上塗りするようにしましょう。
漆喰をベストなタイミングで乾かしたいという場合は、ちょうどよい天候の春や秋に施工するのがお勧めです。
費用は、1平方メートルあたり5,000〜8,500円になります。
工期も季節によって変わりますが、乾燥を待って重ね塗りや仕上げ塗りを行うので
3日〜1週間の工期がかかってしまいます。
漆喰を塗装する場合の4つの注意点
以下では漆喰を塗装する際に注意するべき4つのポイントについて解説いたします。
施工実績が豊富な業者を探す
漆喰の塗装は熟練の技術を必要とします。
そのため、よい施工を行うには歴史を持った施工業者や施工実績の豊富な業者を選ぶことを
お勧めいたします。
また、実績豊富な施工業者には、左官技能士や塗装技能士といった国家資格を持つ職人さんが
多く所属しているのも特徴の1つです。
難しい漆喰の施工実績の多い業者には、知識と経験を持った社員や職人さんが在籍していますので、
業者選びの目安の一つになります。
相見積もりで比較する
漆喰塗装の適正価格は、素人ではなかなか判断することが難しいです。
また、インターネットで平均価格を調べてみても、
お住まいの地域の価格帯とはかけ離れている場合があります。
相見積もりとは、同じ施工を行うそれぞれの塗装業者に見積もりを依頼し、
その見積もり結果を比較することです。
相見積もりで漆喰塗装の仕上がりの良し悪しを判断はつきません。
しかし、足場を架設する費用や、材料の運搬費用といった、
費用の地域相場がわかるようになります。
相見積もりを行うことで余計な出費を減らすことが可能です。
浮いた費用を漆喰外壁の塗装工事に回すことができるため、上質な漆喰の塗装が期待できます。
漆喰以外の素材も検討する
漆喰には様々なメリットがある反面、コストの高さや施工期間の長さといった
デメリットもあります。
汚れも目立ちやすく、 外壁に漆喰を使った場合などはカビや湿気、
排気ガスなどの影響によって非常に汚れが目立ちます。
特に外壁は漆喰が適していない場合もあるので、窯業系サイディングの外壁といった
他の壁材の使用を検討することをお勧めします。
どうしても塗り壁にこだわるのであれば、漆喰の他にも貝殻や火山灰を利用した素材があるので、
利用を考えてみると良いでしょう。
漆喰風の塗料を使用する
外壁を漆喰風の仕上げる塗料も存在します。
代表的な塗料は、アイカ工業株式会社の「ジョリパットアルファ」や菊水化学工業学式会社の「グラナダSi」などです。
「ジョリパットアルファ」は、対応パターンやカラーが多く、漆喰調以外に、土壁やスタッコ、リーフラインなども表現が可能です。
吹き付けやローラーでの塗装も可能ですが、漆喰調にするにはコテやゴテ押さえを使用します。
内壁も外壁も問わず使えて便利です。
「グラナダSi」も、ローラーやコテ、吹き付けなど施工の仕方で表情を変えます。
どちらも漆喰風ということで、本物の漆喰より耐用年数が短くなりますが、耐久性や耐候性に優れ、漆喰自体の価格やメンテナンスの費用が抑えられます。
漆喰の外壁塗装はDIYでできる?
昔ながらの漆喰を塗装する場合は、熟練した技術や経験が必要になります。
しかし最近では、すでに材料と水が混ざっていて、買ってすぐに塗れるカジュアルな漆喰があります。
また、先ほども紹介したアイカ工業株式会社の「ジョリパットアルファ」や菊水化学工業学式会社の「グラナダSi」など、漆喰風に仕上がる塗料もあります。
本物の漆喰よりも耐用年数は短いですが、扱いやすく先々のメンテナンスも簡単です。
もしDIYで外壁を漆喰にする場合は、そういった現代風の漆喰を使うようにしましょう。
ただし、本物の漆喰ではなくても、高圧洗浄やケレンなどの下地処理、養生、下塗り、中塗り、上塗り、十分な乾燥時間を取る必要があるため、素人が取り扱うには難しい部分があるかもしれません。
漆喰は表情が豊かなことでも知られており、美しい外壁面にするためには、やはり熟練の技術が必要になります。
万が一下地処理や下塗りの段階でうまくできていないと、新しくした漆喰も数年で剥がれてしまう場合があります。
そういった心配事を排除するためには、やはり専門業者や腕のある職人に施工を依頼するのが安心です。
まとめ:既存の漆喰外壁に塗装するのは避けよう
漆喰外壁の汚れが気になり塗装する場合には、例え漆喰専用の塗料を使用しても数年ですぐに
剥がれる可能性が高いためお勧めしません。
漆喰壁の塗り替えには有資格者のいる、漆喰外壁の塗り替えに精通している専門の業者に依頼しましょう。
漆喰と似たような手法として塗り壁があります。
以下では他の塗り壁について詳しく紹介しています。
※当日のご来店予約については、お電話にて直接ご連絡頂けますようご協力をお願い致します。