アパートの耐用年数には2つの種類があるってホント?
アパートの耐用年数は「法律で年数が決まっている」と聞いたことがある人がいるかもしれません。しかし、それは建物そのものの耐用年数ではなく、税務処理のために定められた法定耐用年数のことです。実際に住むことができる耐用年数は、建物を取り巻く環境や、どれだけメンテナンスをしたのかによって変わります。今回は2つの耐用年数について詳しく解説します。
法定耐用年数と建物自体の耐用年数の違い
国税庁のWebサイトによると、「木造住宅(店舗用・住宅用)」は22年、「鉄骨鉄筋コンクリート造(住宅用)」は47年といったように法定耐用年数が定められています。木造アパートのオーナーは耐用年数が22年と聞くと、「20年ちょっとしかアパート経営できないのか」と慌ててしまうかもしれません。
しかし、この法定耐用年数はアパート経営や居住するうえでの耐用年数とは異なります。
法定耐用年数とは
法定耐用年数とはその資産が使用できる年数のことで、税務処理的には「その価値がゼロになるまでの期間」です。税務上、事業で保有する現物資産(ここではアパート)は経年劣化によって価値を減じていきます。
しかし現物資産は事業により車や設備器具などさまざまですので、何年でどの程度の価値が減じたかを個々に判断するのは難しいです。そこで資産ごとに価値がゼロになるまでの年数を定めたのが法定耐用年数です。
実は法定耐用年数によって、毎年のアパート経営の収支が大きく変わる可能性があります。ご存じのようにアパート経営を始めるときに建物を建築(もしくは購入)した費用は経費計上できます。その際、初年度に全額を経費計上するのではなく法定耐用年数に分割して経費計上します。
簡略化した例えで紹介すると下記のようになります。
- アパートの取得費用(建設費や購入費用) 5,000万円
- アパートの法定耐用年数 10年
- 毎年計上できる費用 500万円(5,000万円÷10年)
厳密には取得費用に対し耐用年数ごとに定められた「償却率」を乗じて計算しますが、この例では10年間に渡って毎年500万円ずつ経費計上が可能です。経費が多いと収益を抑えられるので節税につながります。かかった費用を分割して計上する仕組みを「減価償却」、計上する経費を「減価償却費」と呼びます。
実際には費用が発生していないのに経費計上できるのが減価償却費のポイントです。仮にほかの経費を差し引いた家賃収益が500万円だったとしても、減価償却費500万円を計上すれば帳簿上の収益は0円になるわけです。
建物自体の耐用年数は物件次第
建物自体の耐用年数はメンテナンスの頻度や環境によって異なるため、一概に耐用年数を出すことはできません。ただ一般的には次のような状態になればアパート経営は難しく、耐用年数に達したと言えるでしょう。
- シロアリや湿気による腐食などで土台が弱っている
- 屋根、外壁、ベランダが劣化し雨漏りや浸水が生じている
- 洗面所やお風呂のカビが多い
このような症状以外に建築基準法や耐震基準にも注意が必要です。築年数が経過したことで法令が変わり、建築基準法や耐震基準を満たさなくなってしまうアパートもあります。オーナーは入居者に対する責任があるため、耐震基準にはできる限り対応しなくてはなりません。
例えば耐震性が不足しているのであれば、耐震リフォームによってアパートを安全に保つようにします。建築基準法や耐震基準を満たしていない場合には、行政から指導を受ける可能性があることも知っておきましょう。
アパートの法定耐用年数がゼロになったらどうなる?
税務上の法定耐用年数を過ぎると、取得費を減価償却費として経費計上することができなくなりますが、その他に大きな違いはありません。住む分には問題ありませんし、アパートの経営にペナルティが生じるようなこともないです。
ただし、建物を担保とした融資は難しくなるかもしれません。融資の審査は金融機関ごとに異なりますが、担保物件の「評価」は重要な審査項目です。金融機関の担保評価は法定耐用年数が基準となるため、耐用年数を過ぎたら建物を担保とした融資は難しいと考えます。建物の保全や修繕のためにどうしても融資を受けたい場合は、土地自体を担保にすることを検討します。
なお、融資申し込み時に法定耐用年数が残っているだけでは安心ではありません。融資の返済についても法定耐用年数内に返済が終了できるのが望ましいとされます。
つまり、税務上の耐用年数が残り10年の場合の返済期間は10年間が目安です。融資を申し込む場合は残りの法定耐用年数を把握し、その年数内で返済できる範囲で申し込みを行うと審査が通りやすいでしょう。
国税庁のWebサイトより建物構造別の法定耐用年数をいくつか紹介します。
木造・合成樹脂造のもの
- 事務所用のもの 24年
- 店舗用・住宅用のもの 22年
木骨モルタル造のもの
- 事務所用のもの 22年
- 店舗用・住宅用のもの 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの
- 事務所用のもの 50年
- 住宅用のもの 47年
れんが造・石造・ブロック造のもの
- 事務所用のもの 41年
- 店舗用・住宅用・飲食店用のもの 38年
建物の構造により法定耐用年数がかなり違うことがわかります。実は駐車場やゴミ置場、給排水やガス設備など、多くの設備で法定耐用年数が設定されています。経理処理上、法定耐用年数は重要ですので確認しておきましょう。
建物の劣化要因は?
実際に住み続けるうえでの耐用年数は建物を取り巻く環境にも左右されます。
劣化の外的要因
劣化の外的要因には日光、潮風、湿気、排気ガスなど複数のものがあります。外的要因は立地や周辺環境、建物の形状によって影響が異なりますので、いくつか具体例を挙げてみます。
- 海に近いと鉄部がサビやすい
- 建物の形状が複雑で風の通りにくい箇所があると湿気がたまりやすい
- 同じ建物でも直射日光が当たる外壁の方が劣化は大きい
- 大きな通りに面していたり高速道路の近くだったり、交通量の多いところではほこりや排気ガスなどで汚れやすい
こういった要因により外壁には次のような症状が現れます。
- 外壁のチョーキングや剥離
- 外壁の汚れやカビ、退色
- 鉄部のサビ、ベランダや屋上の防水機能の低下
- シーリングの寿命やコンクリートひび割れによる浸水
経年劣化による症状もありますが、環境が過酷だと劣化が早まります。汚れや退色など、住む分には問題ない劣化もありますが、美観を損ねるのでアパートを経営するのには好ましくありません。また汚れや退色はメンテナンスが必要となっているサインでもあるので見逃さないようにしたいところです。
自然災害も劣化要因
立地や周辺環境による劣化とともに注意したいのが、地震や台風などの自然災害です。強風によって屋根が傷む、物の飛来によって外壁や窓が破損するなどの危険があります。
怖いのはアパートが加害者になってしまう可能性がある点です。アパートの屋根や外壁が強風によって飛ばされ、近隣の住宅に飛来してしまうことも考えられます。台風が多い地域であれば台風シーズンが来る前に点検し、劣化の見られる箇所は先回りして補修しておくと安心です。
また、地震の場合は建物の土台に影響を与えるかもしれません。自然災害は建物に大きな負担がかかるため、自然災害のあとは一見問題ないように見えるところでも点検するようにします。
アパートの寿命を延ばすためには
建物自体の寿命は外的要因に左右されるからこそ、個々の状態を見極めて適切にメンテナンスをしていくことが重要です。アパート経営では次の3ステップを意識するといいでしょう。
- 普段から建物の状態を確認する
- 定期的な点検スケジュールを作成し、違和感があれば予定を繰り上げて実施
- 点検で劣化が認められたら、時間をおかずにメンテナンスやリフォームを行う
アパートの点検や検査などの予防修繕に力を入れることを意識します。劣化兆候を早期に発見しメンテナンスすれば、建物の耐用年数を延ばすことができるうえに、長い目で見てメンテナンスコストを削減できるからです。
劣化に気付かず放置してしまうと、のちに大がかりな工事が必要になってしまう可能性があります。劣化が進み雨漏りや水漏れが生じ、家具が水にぬれたり大規模な工事が必要になったりしてしまうと、入居者の生活にも影響します。快適な住み心地を守るためにも早めのメンテナンスが重要なのです。
建物自体の耐用年数はオーナーのメンテナンス次第
税務処理上の法定耐用年数は定められていますが、建物自体の耐用年数はオーナーのメンテナンス意識によるところが大きいです。修繕計画を立て、日々状態を確認しつつ計算違いがあれば修正していきます。地道な作業ですが、毎日の積み重ねがアパートの寿命を延ばすことでしょう。定期的なメンテナンスは建物の耐用年数を延ばすだけでなく、建物にかかる費用のコストダウンが見込め、さらに入居者に対して快適な住み心地を確保できるでしょう。
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